相談室日誌 連載556 当たり前の施設入所のために身寄りない人の地域での支援(奈良)
認知症があり、身寄りがない人が施設の入所を申し込もうとすると、後見人がいないという理由で申し込みを断られることがほとんどです。私が以前、地域包括支援センターで仕事をしていた時、頼りにしていたのが、同じ法人内の老健施設のやくしの里。今は同施設の相談員として勤務していますが、身寄りがなく、成年後見の申し立てをしていない人、申し立て途中の人の入所受け入れをしています。
奈良市内では、成年後見の申し立て中であれば入所ができる施設は、何カ所かありますが、申し立てをしていない人を受け入れてくれる施設はほぼありません。後見人が決まっていないので行ける施設がなく、当施設へ入所し、後見人が決まってから特養の申し込みをして、特養に入所できたケース。当施設に入所して成年後見の申し立てをして、後見人がついて他の施設に入所したケースなどがあります。
Aさんは、家で生活している時は金銭管理の支援を受けず、家賃の滞納などもありました。入院したことをきっかけに、社協に通帳と印鑑を預けて、支払いなどを任せるようになりました。当施設へ入所し、成年後見の申し立てを本人申し立てですすめているところです。後見申し立ての時に、診断書を書いてくれる医師がいるかどうかも重要になりますが、当施設では施設医が診断書を書きます。
入所後、急変時の受診や救急搬送の時に看護師が付き添って、長い時間拘束されることが課題になりますが、その看護師が不在の間、フロアは大変ながらも対応しています。相談員は、入所する前に今後の方向性、方針を他機関と連携して考え、入所してからも対応方法を多職種と共有しています。施設職員全体で協力し、他機関と連携し、身寄りのない人を受け入れることができているのだと思います。
身寄りのない人が増えていますが、認知症で、自己決定が困難な人にとっての課題は、本人の経済的な課題整理、成年後見の申し立て、急変時の対応、今後の方向性だと思います。民医連をはじめ、地域の事業所全体で当たり前に施設入所ができるように、支援者がいっしょに考えていけたらと思います。
(民医連新聞 第1800号 2024年2月19日号)
- 記事関連ワード